各家庭がエネルギー消費に対する意識を高め、効果的に節電してもらうという目標を実現するのは難しい。これを実現するために、家電製品、家庭用制御機器、家庭内ディスプレイのメーカーに対し信頼性の高い「節電ソリューション」を迅速に提供するには、プラットフォームが必要である。モニタリングと制御の要求に応えるためには、各家電製品をHAN(Home Area Network)で接続する必要がある。このようなネットワークがあれば、電力会社はスマートメーターを介して、各家庭と直接通信し、エネルギーの使用量を遠隔制御したりモニタリングしたりすることができる。つまり、このシンプルな「省エネルギー対応」プラットフォームにより、すべての人々に対して環境に配慮したよりよい生活がもたらされることになる。本稿では省エネルギー対応住宅を実現する中核技術と、そこでFPGAが果たす役割などについて前編と後編の2回に分けて紹介する。

Audrey Li-Brouwer
米Altera社 コンシューマビジネスユニット
テクニカルマーケティングマネージャ
Steve Nguyen
米Echelon社
コーポレートマーケティング担当ディレクター

省エネルギー対応プラットフォームを支える3つの技術

 3つの主要な技術が、開発者向けの省エネルギー対応プラットフォームを支えている。1つめは、強力で柔軟なFPGAで、省エネルギー対応機器の「心臓部」としての役割を担う。2つめは、電力線ネットワーキングを行うための専用ソフトウエアである。効果的にHANの配線をなくすとともに、設置が複雑になるという消費者の不安も解消する。3つめは、消費者に最新の状況を報告するための、統合された高性能GUI(Graphical User Interface)技術である(図1)。

図1.「省エネルギー対応」プラットフォームのシステム構成図
図1.「省エネルギー対応」プラットフォームのシステム構成図
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省エネルギー対応機器の「心臓部」となるFPGA

 設計者らは従来、設計コンセプトの検証と最初の試作品にFPGAを使用していた。しかし近年の半導体先端製造プロセス技術の進歩により、低コストのFPGAは、大量生産される家電製品に使われるようになった。

 家電製品メーカーは常に、自社製品のBOM(Bill of Materials)コストを低減する方法を模索している。FPGAは、複数のコンポーネントをシングルチップに統合でき、製造後にプログラムが可能であるため、コストを削減するための理想的なソリューションである。FPGAは、構成可能なロジックエレメント(LE)のアレイからなり、1つまたは多種多様な機能を実行するように、構成またはプログラムすることができる。FPGAのLEは、必要な機能を実装するための構成要素として用いられる。

 組み込みプロセッサ「Nios II」を搭載したAltera社のFPGA「Cyclone III」を用いると、複数のMCU(マイクロコントローラユニット)を容易に置き換えることができる。また、IP(Intellectual Property)によってカスタム機能を構築することができ、新しい機能の追加や設計の最終段階での仕様変更、変動する市場要求に対する迅速な適応を可能とし、さらに将来をも保証するソリューションを提供する。これが家電製品のプラットフォームとなり、環境に配慮した理想的な製品を実現する。

電力線ネットワーク : HANのバックボーン

 家電製品において、米Echelon社の「ShortStack API」は、これまで使っていた4つの特定機能向けマイクロプロセッサを、1個のFPGAと電力線スマートトランシーバに置き換えることができる。これにより、コストを下げることができ、設計の複雑さが解消され、開発時間は短縮する。一方で、機器にネットワーク通信機能を追加することにより、電力会社、家電製品OEM企業、消費者は、エネルギー消費量を効果的に管理および制御することができる。ShortStack APIは、Echelon社の電力線スマートトランシーバと連携することで、家庭内の既存の電力配線を通信線に用い「新規配線が不要な」ソリューションを実現する。

 このスマートトランシーバは、「狭帯域電力線トランシーバ」、アプリケーションを実行しネットワーク通信を管理するための「8ビットプロセッサコア」、およびオンボードまたは外付けの「超小型メモリー」で構成され、コストを重視するほとんどの家電製品で使用することができる。

 電力線ネットワーク上の機器は、HANのバックボーンを形成し、屋内または敷地内全体で信頼性の高いHAN通信を提供するという重要な役割を担う。RFベースのセンサーなどその他のデバイスは、RF信号を遮断する煉瓦の壁などを越えた広い範囲をカバーする電力線バックボーンを利用することにより、より効果的に動作する。Echelon社のスマートトランシーバに搭載された電力線信号処理技術とHAN用の通信プロトコルは、世界的な標準規格であるISO/IEC 14908に準拠し、異なるメーカーの機器間での相互運用性を実現する。

 このソリューションにより機器メーカーは、より高い機能と処理能力を、低コストで実現することが可能となり、その適用市場も拡大される。組み込みプロセッサを搭載したFPGAは、プロセッサ、IP(Intellectual Property)ホスト、デジタル信号プロセッサ、およびタッチスクリーン・ディスプレイドライバといった機能を提供する。

タッチスクリーン・ディスプレイ:家電製品を一新

 家電製品には、消費者に豊富な対話型機能を提供するHMI(Human Machine Interface)が新たに加わった。米Altia社のプログラム&シミュレーションツール「Altia Design」やソースコード自動生成ツール「DeepScreen」で開発されたGUIは、多言語、色、サイズが可変できるフォント、解像度、およびその他のさまざまな機能をサポートする。これによって家電製品メーカーは、複数のブランドや製品ラインに単一のGUIを使用することができる。ダウンロードするだけで使用できるソフトウエアによって、メーカーは遠隔地から、新しいバージョンのGUIに更新したり、機能を変更したりすることができる。

 このGUIは、次の2つの主要なコンポーネントからなる。・プラットフォームに依存しない「組み込み画像エンジン」は、ターゲットとするハードウエアプラットフォームから、同一のAPIによるWindowsシミュレーションへの迅速なポーティングを可能とする。・「WYSIWYG GUI構築ツール」は、高度に最適化されたポータブルグラフィックスを利用。ローエンドまたはハイエンド製品への展開に適した、完全なCのソースコードを出力する。

 開発ツールスイートにより、まとまりのある合理的な方法でGUI設計と配置が行われるため、開発サイクルを短縮することができる。これによって、全体的な開発プロジェクトのリクスは軽減し、グラフィカル・アプリケーション開発に伴う高いコストは削減される。

 タッチスクリーン・ディスプレイは、多くの家電製品向けの、主要なHMIおよび製品を制御するメカニズムとなりつつある。ダイアルやプッシュボタンといったHMIの代わりに、これらのディスプレイ上に表示されたHMIが使用されるようになってきている(図2)。消費者に対して、「電力供給量に合わせて家庭でのエネルギー消費量を抑えてほしい」と考える電力会社は、このような家庭用ディスプレイの普及を支持している。

図2. Altia社のHMIは、各家庭において、家族、地域の電力会社、および、HANに接続された機器からのメッセージを表示するただ1つの場所となる。
図2. Altia社のHMIは、各家庭において、家族、地域の電力会社、および、HANに接続された機器からのメッセージを表示するただ1つの場所となる。
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 機能をアップグレードすることのできる柔軟なインターフェースは、今後、より良いサービスと高い価値を消費者に提供する上で、欠かせない存在である。サービスプロバイダから提供されるであろう、革新的だがまだ実現されていないプログラムを採用するためには、アップグレードが可能なGUIのメリットを活用することが必要だ。

企業の詳細については、以下を参照していただきたい。

日本アルテラ株式会社: japan@altera.com  www.altera.co.jp
Altia Incorporated: info@altia.com  www.altia.com
Echelon Corporation: lonworks@echelon.com  www.echelon.com

この記事は、アイティメディア社『FPGA Insights』に掲載されていたコンテンツを、アイティメディア/EDN Japanの許可を得て転載しています。

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